2025年9月28日日曜日

ハムストリングス肉離れ   大橋忠幸   2012年1月19日

 ハムストリングス肉離れ   大橋忠幸   2012119

病態

ハムストリングスは内側の半膜様筋・半腱様筋、外側の大腿二頭筋からなる。

肉離れは『急に筋肉が切れたように感じるとともに、脱力や痛みを伴う状態』をいう。

ハムストリングスの肉離れは遠心性収縮によって筋腱移行部で損傷する。疾走中に下腿が接地に至る過程や接地から蹴りだす過程で起きやすく、大腿二頭筋(長頭)が最も受傷しやすい。

肉離れの要因としては柔軟性の低下、ハムストリングス筋力のアンバランス、ウォーミングアップの欠如などがある。

 診断

鋭い、力の抜けるような大腿後方の痛みなどを本人が感じることが多いため、問診でも容易に推測できる。

ハムストリングスの肉離れではⅠ・Ⅱ・Ⅲ度に分類する。Ⅲ度が最も重症でハムストリングスの完全断裂である。

損傷部に圧痛点があり筋の硬結や陥凹などが重症度に応じてみられる。Ⅲ度に近いほど欠損部を触れるようになるが、数時間経過すると血腫により触れにくくなるので早期に損傷部の診察を行なう必要がある。

徒手検査では、まず腹臥位で膝関節の伸展を行う。Ⅲ度では完全に伸ばすことができない。次に背臥位にしてSLRテストを行い下肢の挙上角度を調べ健側と比較する。軽症ほど健側との差は少ない。

肉離れがⅡ度かⅢ度で迷う場合はMRIによる画像診断が有用である。

治療

筋内の出血や腫脹を軽減させるために重症度に関係なく初期治療はRICEである。

保存療法が主で、Ⅲ度の場合には急性期の外科的修復術(縫合術)を勧める。

 

トレーナーとしての競技復帰プログラム

受傷後3~5日して急性期が落ち着いてきたら、リハビリテーション期としてタイトネステストを行い筋のストレッチ感覚が出たら温熱療法やストレッチなど可動域訓練を行う。筋力訓練は痛みを等尺・等張運動などを組み合わせて行い、遠心性の運動は再受傷の危険性が高いため終盤で行う。進行具合は痛みを目安とする。ランニングや専門競技のトレーニングの開始時期は、階段の昇降動作などが問題なく行なえることが目安にもなる。競技復帰はハムストリングスの柔軟性や筋力の左右差がなくなったり、痛みがなくなるなどを基準としたり、50m走などの機能テストを用いる。Ⅰ度は数日~数週間、Ⅱ度は筋腱移行部の損傷があるため数週~数ヶ月、Ⅲ度は数ヶ月以上を競技復帰までに必要とする。

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